上殿皮神経障害(SCN)に対するリハビリについて

リハビリ

腰痛は老若男女問わず誰もが経験しうる痛みですが、その85%は明らかな原因がわからない「非特異的腰痛」と言われています。その中で近年では「上殿皮神経障害:SCN障害」が影響していると報告されています。今回はこの上殿皮神経障害とは何か、アプローチの考え方についてご紹介していきます。

 

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上殿皮神経とは

上殿皮神経(SCN:Superior cluneal nerve)は、Th11〜L4の後根神経の皮枝が腰背部を下外側へ走行し、腸骨陵近傍で胸腰筋膜を貫通して殿部にいたる感覚神経です。4〜5本に枝分かれしており、それぞれ内側枝、中間枝、外側枝と呼ばれます。

これらの枝全てが腸骨陵と胸腰筋膜で作られるOsteofibrous tunnelを通るのかについては意見が分かれていますが、Kuniya ら の報告によると 、59 体 109 側の SCN 中 56% では少なくとも 1 本が osteofibrous tunnel を通過していた(内側枝の 39%,中間枝の 28%,外 側枝の 13%)とされています。

画像:ヒューマンアナトミーアトラス

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SCN障害の発生頻度

解剖学的研究におけるOsteofibrous tunnelでの絞扼頻度は、1.8〜13%と論文によって幅があります。

また、Maigneは坐骨神経痛のない腰痛の1.4%、Kuniyaは全腰痛の14%がSCN障害であると報告しています。

 

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症状

腸骨陵近傍から上殿部を支配する神経であるため、障害されると同側の殿部痛が出現します。SCNの腸骨陵通過部である正中から3〜4cm外側(2横指:内側枝)と7〜8cm外側(3横指:中間枝)に圧痛点があるのが特徴です。

画像:ヒューマンアナトミーアトラス

体幹の後屈、側屈、回旋、動作として起立、座る、長時間の立位、長時間の座位、歩行、寝返りなどで症状が増悪します。体幹前屈については意見が分かれています。
また、歩行に伴い間欠性跛行がみられることがあり、脊柱管狭窄症との鑑別が必要です。
(Kuniyaらの報告:腰痛のみ52%、腰下肢痛47%、下肢痛のみ1%)
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原因

osteofibrous tunnelでの絞扼だけでなく、胸腰筋膜貫通部での絞扼・牽引による障害で起こると考えられています。確立した原因は明らかでないですが、加齢性変化、椎体骨折の有無、パーキンソン病患者に起こる腰痛やアスリートでの障害例もあることから、傍脊柱筋の筋緊張がSCN障害発症に影響していると考えられています。
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診断基準

X線などの画像診断はできないため、主に臨床症状から判別します。
診断基準は↓
・神経の支配領域の痛み
・正中から7cm外側のSCNが圧迫される腸骨陵部のトリガーポイント
・神経ブロックによる(75%以上の)症状改善
とされています。
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リハビリの考え方

リハビリでのアプローチとしては、影響していると考えられる胸腰筋膜・殿部周辺の筋緊張緩和、殿部周囲の皮膚の滑走性を改善させ、SCNの絞扼を軽減させることが主な考え方かと思います。
以下はリハビリメニューの一例です。
・広背筋ストレッチ
 広背筋の起始が胸腰筋膜となるため、ストレッチすることで教養筋膜を介してSCNに影響を与えることができると考えます。
・殿部周囲の皮膚滑走性改善
 大臀筋部の皮膚を腸骨陵(上殿皮神経の走行)に向かって動かします。強く押さえると痛みが出る部位なので、あくまでも皮膚と皮下組織の滑走性を出すように浅く押さえて動かします。痛みを出すと筋緊張が上がり、絞扼を強めてしまう可能性もあるので慎重に行います。
・大臀筋のストレッチ
 大殿筋は、股関節屈曲・内転位にすることでストレッチできます。これも患者さんが伸びていると感じるくらいの張力から、時間をかけてストレッチしていき緊張をとります。
・筋収縮を利用した緊張緩和
 上記のメニューで痛みが緩和されてきていれば、殿筋の筋収縮を促し血液循環を高める方法も効果的かと思います。スクワットやブリッジ動作、自転車エルゴメーターなどを用いて、その人にあった適度な負荷量のトレーニングを追加します。
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最後に

今回は上殿皮神経障害に対するリハビリの考え方についてご紹介しました。軽症の方であればリハビリによる効果が期待できますが、重症の場合は神経ブロックや除圧術が適応となる場合もあります。症状の程度に応じて、適切な対応ができるようにしたいですね。

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